消化管グループの紹介と特徴

上部消化管は、食道や胃・十二指腸を専門領域として診療を行っています。主な対象疾患としては、胃がん、食道がん、消化管間質性腫瘍や頭頸部がんなど、幅広い疾患を取り扱っています。
我々が主に診療を行う胃がん、食道がんという疾患は、がんの進行の程度によって臨床病期(ステージ)で分類され、早期に発見された患者さんほど治りやすいことが分かっています。我々は、内視鏡を用いてがんを早期に診断すること、より体への負担を少なくがんを治すこと、がんやがん治療に伴う辛い症状を緩和することを目標に診療を行っています。患者さんを中心に、一般・消化器外科、放射線治療科等と連携してキャンサーボードを実施し、患者さんへの負担が最も少なく、最良のがん診療を提供することを日々心がけています。治療の際には十分な説明(インフォームド・コンセント)によって、患者さんご自身がご自分の病気をよく理解されたうえで治療を開始することを念頭にしています。

下部消化管は、診療面では大腸癌やポリープの診断と内視鏡治療、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の診断と内科治療を主に担当しています。
大腸癌の罹患率は男性では13人に1人、女性では11人に1人と比較的高率で、悪性腫瘍による死亡率でも女性は1位、男性は2位の疾患です。当グループでは主に早期大腸癌の内視鏡治療として内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行っています。また、下部消化管外科と連携し、進行大腸癌に対する大腸ステント挿入術も行っています。
炎症性腸疾患は腸管に潰瘍を伴う炎症を生じる原因不明の慢性疾患です。潰瘍性大腸炎やクローン病などの疾患があり、ともに下痢や腹痛、血便などで発症し、寛解期(症状がない状態)と活動期(症状がある状態)を繰り返すのが特徴です。根治的な治療法はなく、好発年齢が10代後半から30代と若年であることから長期にわたり通院・治療が必要になります。当グループでは潰瘍性大腸炎、クローン病の診療を行っております。潰瘍性大腸炎やクローン病に対する生物学的製剤治療や、クローン病に対しては非侵襲的に腸管狭窄や腸管炎症を評価できるMRエンテログラフィー(MRI検査)も導入し、腸管狭窄に対しシングルバルーン小腸内視鏡によるバルーン拡張術を行っています。その他の腸疾患の症例も多く、小腸疾患に対してシングルバルーン小腸内視鏡検査やカプセル内視鏡検査による診断や内視鏡的止血術などを以前から行っています。

代表的な治療

上部消化管腫瘍の治療には主に内視鏡治療や全身化学療法(抗がん剤治療)があります。内視鏡治療では早期胃がん・食道がん・十二指腸腫瘍に対して積極的に治療を行っております。また、放射線治療後食道癌の患者さんを対象に、低侵襲な局所治療として光線力学療法(PDT)も行っております。
全身化学療法では、世界の最新エビデンス(科学的根拠)に基づいた全身化学療法の提供ならびによりよい標準治療を確立するため、標準治療をベースとする新規併用療法の開発を日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の参加施設として行っています。さらに進行胃がん、食道がんの治療向上のため、集学的がん診療センターと連携し、がん遺伝子パネル検査相談外来にて専門の医師が担当し、患者さんおよびご家族のがんゲノム医療に関する相談や質問にお答えする、がんゲノム医療に関するセカンドオピニオン外来も行っております。詳しくは、北里大学病院ホームページにある診療科ご案内「がん遺伝子パネル検査相談外来」をご参照ください。

最近では患者さんのニーズにお答えするため、臓器横断的・職種横断的ながん治療を目指し低侵襲な手術も行っております。一般・消化器外科と合同で胃粘膜下腫瘍や胃癌に対する、腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)や耳鼻咽喉科・頭頸部外科と合同で頭頸部癌に対する、内視鏡的咽喉頭手術 (ELPS)を行っております。

大腸腫瘍の内視鏡治療は内視鏡的粘膜切除術(EMR)か、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行っております。また、大腸癌の深達度を拡大内視鏡や超音波内視鏡を用いて診断しております。
炎症性腸疾患の内科的治療は5-ASA製剤やステロイド製剤、免疫調節・抑制薬、生物学的製剤、血球成分除去療法など多岐にわたり、それぞれ適応や治療法、治療効果、副作用などが異なります。当グループでは、疾患の重症度や合併症なども考慮した上で、患者様の生活様式やニーズに則した治療法を提案し、地域の医療機関と医療連携を取りながら治療を行っております。

治療にお困りの患者さんがおられた際は、お気軽にご相談ください。

スタッフの紹介と臨床・研究実績